「もしかして今回の件には、お月さまがなにか関係してるの?」


「うむ。まだ推測でしかないが、その可能性は高い。岩のペットになった亀の目の色を見たであろう?」


「お月さまみたいな色してたね。すっごい綺麗な色だった」


「あの独特な色には見覚えがある。あれは霊山の頂の月の色と同じじゃ」


「霊山? なにそれ?」


「お前も一度、行っておる。奥方によって幽閉された永久を助けるために、祠へ飛び込んだであろう?」


「あ、あの山!」


 そうだ、思い出した!


 あたしは一度、門川君に記憶を奪われて、強制的に現世に送り返されたことがある。


 絹糸に記憶を戻してもらったけど、あんときゃ本気でムカついたなー。今でも思い出すとハラ立つよ。


 それはともかく、ピンチの彼を助けるために不思議な山へ登ったんだよね。


 町の中にデーンと存在しているのに、誰にも気づかれることのない山だった。


 そういや、すごく綺麗な月の光が祠を照らしてたっけ。


「月はもともと霊験あらたかな存在じゃ。さらにあの特殊な山の力場によって、霊力は無限に増大する」


 そっか。あのときも数百年間も眠り続けてた、緑色に苔むしちゃってた祠を、メンテもなしに一発で稼働させたもんなぁ。


 お月さまの力ってすごいんだね。


 月には神秘的な魅力があるけど、本当に神秘の力を持ってたんだ。


「じゃあ、あの山へ行くってことでオーケー?」


「どういった関わりがあるのか、そもそも関わりがあるかどうかも定かではないが、行ってみる価値はあろう」


「そうだね。現状、それ以外の手がかりはないんだし、行ってみよう!」


 そう言って立ち上がったあたしを先頭に、チーム全員が山へ向かうことになった。