神様修行はじめます! 其の五

 でも真美のことを大切だから、言えない。


 大切な相手になにも言えない自分が、悲しい。


 写真の中の幼いあたしたちは、真っ直ぐキラキラな顔して笑ってる。


 その笑顔が今のあたしには眩しくて、羨ましくてしかたないんだ。


 あの頃のままでいられたらいいのにって思ってしまう。


「ねえ里緒、もう一回約束しよう。これからも、どんなことでも打ち明けられる親友同士でいようって」


 写真からあたしへ視線を移した真美がそんなことを言って、あたしの胸がドキンと騒いだ。


 あたしは反射的に作り笑いを浮かべて、なんとなく視線をそらす。


「なに? どしたの急にそんなこと言って」


「んー。ただ、なんとなく」


 そう言って真美は素直に微笑んでいる。


 なにか含みのある様子も見えないし、たぶん本当に、特に深い意味もなく言い出したんだろうと思う。


 でも、もしかしたら真美は、薄々気が付いているのかもしれない。


 あたしの中の秘密をなんとなく感じていて、無意識に不安や寂しさを抱えているのかもしれない。


「ね? 約束しよ?」


 ニコニコしている真美に、あたしは答えた。


「……うん。あたしたち、親友同士だよ」


 笑いながら答える胸が苦しい。笑顔の仮面を貼り付けた自分が悲しい。


 でもあたしは、こう答えるしかないの。


 真美の不安を和らげるために。そしてあたしの、せめてもの本心を伝えるために。


「真美はあたしの大切な親友だよ」


「うん。里緒もあたしの大切な親友だよ」


 そしてあたしちたちは、コーラの缶を開けてゴクリと飲み込んだ。


 強い炭酸がノドを通って、軽い痛みをともなう痺れが胸を灼く。


 このモヤモヤした苦しさを飲み下してしまいたかったのに、余計に痛みが増しただけ。


 あたしは少しだけ唇を噛みながら、両手で缶をギュッと握りしめた。