「違うよ。それは五年生のとき。里緒が大失恋したバレンタインの後で撮った写真じゃん」
「あー、そうだったそうだった! ちっくしょー工藤め! あたしは今でも覚えているぞ!」
当時、あたしが片想いしていた男の子は、四組の工藤くん。
勉強ができて、スポーツもできて、クラスのリーダー的存在で、しかもイケメンという、モテるのが宿命みたいな男の子だった。
クラスが違うからほとんど話したこともなかったけど、なにしろ目立つ存在だったから、彼に恋しちゃってたんだよなぁ。
「真美と一緒に、初めてバレンタインのチョコなんか作っちゃったよね。すっげ気合い入れたよなぁ」
「まさか工藤が、同じクラスの奈良さんを好きだったなんてねー」
「うん、知らなかったから。四組の教室で、奈良さんの目の前でチョコ渡しちゃったんだよなぁ」
「少女マンガみたいな展開だったよね。あのときのあんたたち」
そうなんだ。決死の覚悟で、今にも心臓が飛び出そうになりながらチョコを差し出したあたしに、
『これは受け取れない。俺が欲しいチョコは世界でひとつだけだから』
なんてセリフを吐きやがった工藤のやつが、奈良さんを熱い目でジッと見つめてさ。
『俺は、お前からのチョコがほしいんだ』
なんつってさ――――!
涙ぐんだ奈良さんが、『あたしでいいの?』なんて言っちゃったりして。
『ああ、奈良がいいんだ』とか工藤も答えちゃったりして。
ここで壮大なミュージックが流れないのが不思議なくらいの、超ドラマチックな盛り上がり。めでたく美男美女カップル成立した。
そのダシに使われたあたしは、人生初の手作りチョコを手に持ったまま、周囲の祝福に包まれる幸せなふたりの姿をボーゼンと眺めてたっけ。
んなーにが、『俺は奈良がいいんだ』よ。そんなに奈良がいいなら関西に引っ越せっつの。
「あー、そうだったそうだった! ちっくしょー工藤め! あたしは今でも覚えているぞ!」
当時、あたしが片想いしていた男の子は、四組の工藤くん。
勉強ができて、スポーツもできて、クラスのリーダー的存在で、しかもイケメンという、モテるのが宿命みたいな男の子だった。
クラスが違うからほとんど話したこともなかったけど、なにしろ目立つ存在だったから、彼に恋しちゃってたんだよなぁ。
「真美と一緒に、初めてバレンタインのチョコなんか作っちゃったよね。すっげ気合い入れたよなぁ」
「まさか工藤が、同じクラスの奈良さんを好きだったなんてねー」
「うん、知らなかったから。四組の教室で、奈良さんの目の前でチョコ渡しちゃったんだよなぁ」
「少女マンガみたいな展開だったよね。あのときのあんたたち」
そうなんだ。決死の覚悟で、今にも心臓が飛び出そうになりながらチョコを差し出したあたしに、
『これは受け取れない。俺が欲しいチョコは世界でひとつだけだから』
なんてセリフを吐きやがった工藤のやつが、奈良さんを熱い目でジッと見つめてさ。
『俺は、お前からのチョコがほしいんだ』
なんつってさ――――!
涙ぐんだ奈良さんが、『あたしでいいの?』なんて言っちゃったりして。
『ああ、奈良がいいんだ』とか工藤も答えちゃったりして。
ここで壮大なミュージックが流れないのが不思議なくらいの、超ドラマチックな盛り上がり。めでたく美男美女カップル成立した。
そのダシに使われたあたしは、人生初の手作りチョコを手に持ったまま、周囲の祝福に包まれる幸せなふたりの姿をボーゼンと眺めてたっけ。
んなーにが、『俺は奈良がいいんだ』よ。そんなに奈良がいいなら関西に引っ越せっつの。


