神様修行はじめます! 其の五

 遠くの方から、複数のサイレンの音が近づいてくる。


 あれは、消防車のサイレン? パトカーのサイレン音も聞こえる。


 うわうわ、まずい。公務員の大集合だ。こうしちゃいられない。早くこの場から立ち去らないと!


「そ、それでは、通りすがりに仲良くなった皆様! 無事に脱出できたことですし、さっさと解散しましょうサヨウナラ!」


 あたしは裏門の方を指さしながら、『ここから退散!』の指示を出す。


「ご縁があったら、またお会いできるといいですね! なんか、どっかの武家屋敷とかで、運命的に再会しちゃうような予感がしますけどね!」


『みんな、ひとまず武家屋敷に戻っていて。あたしも後で行くから、午後にでも合流しよう』


 あたしの言いたいことを的確に読みとってくれたみんなが、うなづきながら素早くこの場を離れていく。


 ハヤテのように立ち去っていく奇怪な集団を見送りながら、真美が困惑した声を出した。


「ねえ里緒、あの人たち大丈夫? こんな大変な事故に遭ったのに、病院で診察とか受けなくても平気なのかな?」


「あ、それは大丈夫。あの人たちに関して、間違いなくその心配はない」


「そ、そう? でも里緒はちゃんと診察受けなさいよ?」


「いやいや、平気平気! まるきり健康体! 背骨折って半身不随になりかけたりとか、ぜんぜんしてないから大丈夫!」


「……なにその、妙に具体的な症例は」


「べ、べつにぃ。ほら、早く教室行こうよ。学校から家の方に緊急連絡がいってるんじゃない?」


「あ、そうだね。今日はもう下校だってさ。親に迎えに来てもらって、確認の手続きが済んだら帰っていいって」


 その後すぐ、真美のお母さんとあたしのお母さんと、双方無事に連絡がついた。


 でもうちのお母さん、いま市外にいるから迎えに来るまでちょっと時間がかかるらしい。


 だから真美のお母さんの車で一緒に帰って、うちのお母さんが戻って来るまで、真美の家にお邪魔させてもらうことになった。