「里緒、あんた何で穴から出現してんのよ!? ひょっとして落ちたの!?」


 真美が中履きのままヒラリと窓から飛び出した。青い顔してこっちに駆け寄って来る。


「ま、真美、なにしてんの! ここは崩落現場なんだから危ないよ!」


「そのセリフ、そのまんま里緒に返す!」


 あたしも急いで真美に駆け寄り、あたしたちはぶつかるように抱き合った。


 目の前で、真美の真っ黒なショートヘアがサラリと揺れる。


 真美はギュウギュウ全力であたしを抱きしめながら大声で叫んだ。


「里緒、大丈夫!? なんで穴なんかに落ちたのよ!?」


「う、うん。あの、たまたま通りがかった瞬間に、運悪く足場が崩落しちゃって」


「授業中だったでしょ!? なんで校庭なんかにいたの!?」


「え、えぇと、それは……」


「アマンダ~。先に行かないで。お待ちになって~」


 後ろから聞こえた声に、あたしはギクッとして振り向いた。


 穴の淵からセバスチャンさんと、お岩さんと、凍雨くんがモゾモゾと這い出てくる。


 ヤバ! あの人たちと真美を会わせたら、絶対に面倒なことになる。なんとかごまかさないと!


「里緒、あの人たちは?」


 真美は、続々と穴から出現する見知らぬ人物を見てキョトンとしている。


 あたしはさり気なく穴の方を背中で隠すようにして、シドロモドロ言い繕った。


「えぇと、えっとね、あの人たちもたまたま通り掛かって、崩落に巻き込まれたみたいなの」


「……? なんで他校の生徒と中学生が、うちの校庭にいたの?」


「さ、さあ? なんでだろう。ねぇ真美、ここは危ないからあっちの方へ行かない?」


「アマンダったら、お待ちになって。わたくしを置いていかないでくださいな」


 どうにかして真美をここから連れ出そうとしていたら、お岩さんの方から近寄ってきてしまった。


 うわ、来ないでお岩さん! お願いだから、あっち行っててー!