手をギュッと握って胸の痛みに耐えていたら、とつぜん、足元がボーッと青白く光り出した。


 真っ黒の地面の一面に、小さな小さな無数のコバルトブルーの輝きが、燐光みたいに浮かび上がっている。


 巨大な幻想画のような世界の中で、みんな目を丸くして自分たちの足元に見入っていた。


 うわ、まるで星空の上に立っているみたい! 銀河を上から直に眺めているみたいだ!


「これ、なに!?」


「発光生物を加工した物だ。闇に反応して自ら光を放つ性質がある」


「これってクレーターさんのアイテムなの? すごい。まるで海ホタルみたいだね!」


「この光は長くはもたない。視界が効くうちに、ここから脱出する方法を考えてくれ」


 そう話すクレーターさんの声は、静かで落ち着いているものの、表情がひどく固い。


 娘を目の前で敵にむざむざ攫われたんだから、無理もない。しかも攫った相手は、深すぎるくらい因縁深い相手だ。


 嵐のように渦巻く激しい葛藤を、懸命に抑えつけているんだろう。


 あたしも、目の前の手がかりをむざむざ取り逃がしてしまった焦りを抱えていた。地味男の出現が、得体の知れない不安を増加させる。


 門川君、あなたはどこにいるの? てっきり水園さんと一緒だとばかり思っていたのに。


 どうかお願い。無事でいて……。


「いろいろ話したいことは山積みじゃが、何よりもまず穴から出ることが先決じゃな。皆、我の背に乗れ」


 絹糸の言葉にみんなうなづいた。


 そうだ。一刻も早くここから立ち去った方がいい。こんな大掛かりな崩落事故なんだから、騒ぎになるのは間違いない。


 それに、また学校のチャイムが鳴ったら大変だ。マクシミリアンが原寸大に戻っちゃう。