胸元から頭を出している絹糸が答えた。


「上位の名門一族は、そうそう変わるものではない。多少の入れ替わりはあれどもな」


「昔から、ずっと同じ一族たちばかりが、上位に居座り続けている……ってこと?」


「そうじゃ。上位になればなるほど、下位の一族がその座に取って代わるのは難しいからのぅ」


 うん、そりゃそうだ。


 現世だってそうだもん。政治家とかさ、名門一族がずーっと昔から政界に居座り続けているし。


 長い時間が経てば経つほど、固定されてしまったものは、動かなくなっちゃうもんだ。


「そして上位の一族たちは、自分たちの体面を重要視する。婚姻に関しても、『格』にこだわるのじゃ」


 格? ……あぁ、なるほど。


「『うちの息子の嫁は、◯◯家くらいの娘さんじゃなきゃ、釣り合いがとれないザーマスわぁ』ってやつ?」


「そう。その、ザーマスじゃ。結果として狭い範囲の一族同士での婚姻ばかりが、繰り返されることになる」


 絹糸は、地味男に向かってチラリと視線を投げた。


「そういうことを言いたいのであろう? お前は」


「左様にございます」


 頭を下げたまま、地味男が淡々と答えた。


 背中で一本にまとめられた地味男の長い髪を、絹糸の金色の目がじっと見つめている。


 綺麗なアーモンド型の両目が、なにかの含みを持つように、意味深に細められた。


「親子・兄弟間などの極端な例ではないにせよ、限られた一族同士ばかりが、長期間にわたって婚姻を繰り返していれば……」


「おのずと、血は濃くなってしまう。ということか」


 地味男に最後まで言わせず、門川君が受けた。