知らなかった。まさかこっちの世界では、そのキンシンコンってやつが普通に認められているだなんて。


 …………あれ?


 ちょっと待て。それじゃおかしくないか?


 だってそれが可能なら、なんでお岩さんとセバスチャンさんはあんなに悩んで……。


「認められてはいないよ。大昔ならいざ知らず」


 隣でしきりに首を傾げるあたしの様子から、疑問を読み取ったらしい門川君が答えてくれた。


「太古にはそういった婚姻もあったようだが、現在では認められていない」


「だよね? やっぱそうだよね?」


 普通に考えて、そりゃ認められないよね?


 でもさっき地味男が、『近親婚が原因』とかなんとか言ってたじゃん?


「限定的な関係での婚姻が、繰り返された結果……ということか?」


「さすがは、当主様。お察しの通りにございます」


 門川君の言葉に、地味男が感嘆の声を上げた。


 とたんに門川君は口元に手を当てて、思考に没頭するとき定番のポーズになる。


 そんなふたりを交互に眺めながら、あたしはさらに小首を傾げてしまった。


 どうやら門川君・地味男間では、意思の疎通がなされてるみたいだけど、あたし全然わかんない。仲間外れだよ。


「絹糸、どういうこと? 結局近親婚って、あるの? ないの?」


「意図してやっているわけではないが、結果として、そうなってしまっている……ということじゃろうよ」