きっとこっちの世界では、異形は存在できない仕様になってんでしょ?
酸素が薄くて高山病になっちゃうとかさ。飲み水が合わなくてお腹壊して脱水症状おこすとかさ。
理屈はわかんないけど、なんかそんな感じなんでしょ……?
不安を打ち消してほしくて言った言葉に、絹糸は不確かな答えを返してよこした。
「ない。……とも言えるし、あるとも言える」
「なにそれ。どっちよ」
「実を言えば、異形はこれまで何度も現世に現れておるんじゃよ」
「え!? 現れ……ウゲッほ! ゲホッ! ゴフゴフぅ!」
「飯粒を盛大に口から飛ばすでないわ。まったく」
あたしはペットボトルのお茶をゴクゴク一気飲みして、ようやく息を整えた。
ぶはあっ! だ、だってだって、そんなん初耳だよ! そんな事実、あたし知らない!
もしも異形が現世に現れたら大騒動になるじゃん! 大ニュースになるよ! 光の速度で噂が世界を駆け巡っちゃうよ!
どっかの国の大統領の中二病発言なんて、問題になんないレベルだよ!
「でもそんなニュース聞いたことないよ!? 異形がこっちの世界に来ないように、神の一族たちが守ってくれてるからじゃないの!?」
「もちろん、ちゃんと守っておるわい。それが神の一族の役目じゃからのぅ」
ネコ缶を食べ終わった絹糸が、ペロペロと前足を舐めながら言葉を続ける。
「じゃからこそ、『にゅーす』になるほどの大物な異形は現世に通ってこられぬのじゃ」
「へ? どゆこと?」
「ううむ、どう説明すればよいかのぅ……? 小娘よ、魚取りの網を想像してみい。巨大な魚は、網の目を通り抜けられるか?」
「ううん。抜けられないよ?」
「では、小指の爪の先ほどの小さな魚ならどうじゃ?」
「あ……」
「そうじゃ。あまりに小物な異形は、神の一族の守りの間をすり抜けてしまうんじゃよ。それらすべてを阻止することは不可能なんじゃ」
「んじゃ、現世に来ちゃったヤツらはどうすんの?」
「覚えておらぬか? そもそもお前は『あるばいと』の面接でここへ来たであろう?」
「あ……あーあ!」
酸素が薄くて高山病になっちゃうとかさ。飲み水が合わなくてお腹壊して脱水症状おこすとかさ。
理屈はわかんないけど、なんかそんな感じなんでしょ……?
不安を打ち消してほしくて言った言葉に、絹糸は不確かな答えを返してよこした。
「ない。……とも言えるし、あるとも言える」
「なにそれ。どっちよ」
「実を言えば、異形はこれまで何度も現世に現れておるんじゃよ」
「え!? 現れ……ウゲッほ! ゲホッ! ゴフゴフぅ!」
「飯粒を盛大に口から飛ばすでないわ。まったく」
あたしはペットボトルのお茶をゴクゴク一気飲みして、ようやく息を整えた。
ぶはあっ! だ、だってだって、そんなん初耳だよ! そんな事実、あたし知らない!
もしも異形が現世に現れたら大騒動になるじゃん! 大ニュースになるよ! 光の速度で噂が世界を駆け巡っちゃうよ!
どっかの国の大統領の中二病発言なんて、問題になんないレベルだよ!
「でもそんなニュース聞いたことないよ!? 異形がこっちの世界に来ないように、神の一族たちが守ってくれてるからじゃないの!?」
「もちろん、ちゃんと守っておるわい。それが神の一族の役目じゃからのぅ」
ネコ缶を食べ終わった絹糸が、ペロペロと前足を舐めながら言葉を続ける。
「じゃからこそ、『にゅーす』になるほどの大物な異形は現世に通ってこられぬのじゃ」
「へ? どゆこと?」
「ううむ、どう説明すればよいかのぅ……? 小娘よ、魚取りの網を想像してみい。巨大な魚は、網の目を通り抜けられるか?」
「ううん。抜けられないよ?」
「では、小指の爪の先ほどの小さな魚ならどうじゃ?」
「あ……」
「そうじゃ。あまりに小物な異形は、神の一族の守りの間をすり抜けてしまうんじゃよ。それらすべてを阻止することは不可能なんじゃ」
「んじゃ、現世に来ちゃったヤツらはどうすんの?」
「覚えておらぬか? そもそもお前は『あるばいと』の面接でここへ来たであろう?」
「あ……あーあ!」


