連中にとっては、自分たちの一族の位の高さが、なにより自慢なのよ。


 誇りであり、生きがいみたいなもん。


 対して、異形のモノと戦えるだけの力を持たない『非・能力者』は、こちら側では異端の存在だ。


 嫌な言葉だけど、一族のツラ汚し的に思われている存在。


 そのツラ汚しが、ピラミッド上部の高貴な一族ばかりから生まれている……?


 ―― ザワザワザワ……


 池に放られた小石から生じる波紋のような、小さな動揺が当主たちの間に走った。


 いま地味男が言ったことが本当なら、セレブ連中にとって由々しき一大事だろう。


 自分たちの生きがいである血統に、真っ黒な墨汁をぶっかけられるようなものだもの。


「それで、その意味するところは?」


 ざわつく空気を制するように、門川君が地味男に問いかける。


「その事実を元にして、君はどんな仮定を導き出したのだ?」


「はい。上位一族と、下位一族の婚姻のしきたりの違いが、疑問を解くカギであるのではないかと考えました」


「しきたりの違い? それは、どういったことだ?」


「はい。それは……」


 自分の発言が、この場の全員の注目を浴びている。


 そのことは充分理解しているだろうに、この男の声にも態度にも、少しも気負いや芝居がかった様子は見られない。


 あくまでも控えめで、そしてどこまでも淡々とした口調で、彼は答えた。