「なんで!? なんでこんなことになったんだっけ!? 原因は!?」

「永久じゃ」

「おーまいがー!」


 そうだった! 門川君が、大技かましてくれたんだった!


 ということは、あの術は転移系の術だったんだきっと!


「か、帰ろう! いますぐあっちの世界に、知らないふりして戻ろうよ! じゃないとみんなの立場が風前の灯火……!」


「永久を放り出してか?」


「うっ……」


「おそらく永久も現世にいるはずじゃ。ますます放ってはおけぬ」


 あたしは唇をグッと噛みしめて、黙りこんでしまった。


 そうだ。門川君がこっちにいることこそが、一番の大問題。


 すぐにでも彼を見つけ出して、トラブルを抱えているなら早急に対処しなければならない。


 そんなこと、わかってる。でも……。


『僕がきっとあなたを守ると誓う! だから、どうか僕のそばにいてくれ!』

 
 あの言葉を、あの表情を思い出すたび、息が止まりそうになるほど苦しい。


 思い出したくないのに、刻まれた記憶が勝手にフラッシュバックする。


 こんな打ちのめされた気持ちは初めて。見知らぬ場所に置き去りにされて、取り残されてしまったような気持ちになる。


 なんとかしたいのに、どうすればいいのかわからない。


 ううん、本音を言うのなら……もうこのまま、なにもかも放り投げてあちらの世界へ逃げ帰りたいんだ。


 だってあたし、門川君に会うのが怖い。


 水園さんと一緒の彼の姿を見るのが恐ろしい。彼の真意を知りたくない。


 あの言葉の奥にある、彼の水園さんへの本当の気持ちを知ることが恐ろしくてたまらない。