「ねえ、アマンダ」


「……お岩さん……なんで? なんでみんな、ここにいるの……?」


「その反応は、やはり、そういうことですのね?」


 そう言ってお岩さんは、戸惑いと、興奮と、不安と、驚愕の全部をごちゃ混ぜにした顔で、周囲に視線を巡らせた。


 お岩さんだけじゃなく、絹糸を除く全員が、完全に途方に暮れた様子で周りをキョロキョロ見回している。


「つまりここは、現世ですのね? わたくし、生まれて初めて来ましたわ……」


 …………。


「え――――!?」


 ワンテンポ遅れてから、あたしは目を剥いて大声を張り上げてしまった。


 現世!? ここ、現世なの!? いや現世だよそうだよ間違いないよ!


 それ、生まれ育ったあたしが一番よく知ってるよ! ここ現世! あたしのホームグラウンドぉぉ!


「なんで!? どーして!? なんでこうなっちゃったの!?」


「小娘、静かにせい。こんな夜中にそんな大声を出して、近所迷惑じゃろうて」


「そんな町内会役員のオッサンみたいなこと言ってる場合じゃないって絹糸!」


 あたしはアスファルトの道路に座り込んだまま、両手両足をジタバタさせて叫んだ。


 あっちの世界のみんなが、それも一族の長たちが、許可もなくこっちの世界に来ちゃったんだよ!?


 この意味、わかってるの!?


「まあ、前代未聞の重大な違反行為じゃな」


「あちら側に知られたら、引っくり返るほどの大騒動になりますわね」


「長老会議で審問にかけられるのは、間違いございませんでしょう」


「良くて無期限の謹慎処分。悪ければ、長の座の代替わりを強要されちゃいますよね……」


「最悪、謀反を疑われまする。そうなったら、麻呂らは自分たちの一族から永久追放させられるでおじゃるよ」


 おーまいがー! とんでもねーよー!


 そーなんだよ! あっち側の人間が勝手に現世側に来るのって、超重大犯罪なんだよー!