まだハッキリとは頭が覚醒していないけれど、どうやら、あの落盤事故現場からは無事に脱出できたらしい。


 門川君が大技を発動してたみたいだけど、相変わらずスゴイ。どんな方法で助けてくれたんだろう?


 疑問に思いながら上体を起こして、とりあえず周囲の様子を確認した。


 まっさきに、あたしの周りをグルリと取り囲んだ仲間たちの顔が見えて、まずはホッと胸をなでおろす。


 おお、みんな揃ってる揃ってる! よかった全員無事だった!


 ヘタすりゃあのまんま、水中で生き埋めになることろだったもんね。またみんなで地上に戻ってこられてよかった!


 ……と、普通に素直に安心したんだけど……。


「…………あれ?」


 すぐに違和感に気がついて、あたしは小首を傾げた。


 なにかが変だ。……いや、変じゃないんだけど。


 なにも変じゃないはずなのに、なにかを変に感じることが、なんか、変。


 という、非常にビミョーでとらえどころのない感覚に、さっきから囚われている。


 なんだ? いったいなにが変なんだ?


 だって全員ここに揃ってるし、みんなピンピンしてるし。


 もうとっぷり日が暮れて夜になっちゃってるのが、意外と言えば意外だけど、べつに周囲には異常もみられない。


 道路沿いの街灯はちゃんと灯っているから、さっきまでいた水の中みたいな、ひどい暗さに怯えることもないし。


 道路脇の家々の窓にも、明るい電気が灯っている。


 大通りの方からは、車が行き交う耳慣れた音も聞こえてくる。


 あちこちから美味しそうな夕飯の匂いとか、子どもの笑い声とか、お風呂の良い香りとかの、実に心和む情景が……。


「……は?」


 そこであたしは、目をパチパチさせた。


 そして、すっごく複雑な表情でこっちをガン見している仲間全員の顔を、ハタと見返す。