その雑種のあたしが、言ってみれば一国の王妃様になろうとしているんだ。


 臣下が、『……ちょっと待ったあぁ!』って叫びたくなるのも、うなづける。


 まぁ、この人達は、たんに自分の娘を門川君に嫁がせて、権力握りたいだけのカエルの集団だけど。


「そのことに関しまして、実は蛟一族を代表して、当主様にご報告したい議がございます」


「……なんだ?」


 自分に向かって深々と頭を下げる地味男を、門川君は見つめている。


 さっきまでとは違った種類の冷たさを持つ、感情の動きを悟らせないような視線だった。


「我ら一族は、常世島の者たちを管理する役目を任されております」


 常世島。

 それは、こちら側にとって特殊な意味を持つ場所。


 れっきとした神の一族でありながら、なぜか能力を一切持たずに生まれてきた者たちが、閉じ込められる場所だ。


「よく知っている。それが?」


「なぜ、力を持たぬ者が生まれるのか。その謎を解くカギになる、ひとつの共通点が見つかりました」


 門川君ばかりでなく、当主たちもあたしも驚いて、食い入るように地味男に見入った。


 神の能力を持たない者が生まれることによって、こちらの世界では昔から、たくさんの悲劇が起こっている。


 でもプロセスはまったく不明で、とりあえず厄介者は、離れ小島に閉じ込めておけばそれでいい。


 これまではそんな風潮ばかりが蔓延していて、調査する動きもなかったのに……。


 原因、ついにわかったの!? それがホントならすごいじゃん!


 でかした地味男! 今回だけは褒めてやる!


「長年の謎を、蛟一族がついに解明したということなのか?」


「まだ確信には至りませぬが、この場で、ご報告してもよろしゅうございますか?」


「許す。君の話を聞くとしよう」


 地味男は深々と頭を下げて、皆の注目の中、語り始めた。