神様修行はじめます! 其の五

 だとしたら……。


「あたしが、やる」


 あたしは大きく深呼吸して、ギッと異形を睨み据えた。


 ここは、あたしがやるしかない。あたししか戦えないもの。


 あたしの力もあんまり水とは相性良くないけど、滅火の炎は純粋な火とは性質が違うし。


 しっぺ返しのリスクはあっても、絹糸ほどじゃないはずだ。


 みんなも同じ考えらしく、真剣な表情であたしを見ている。


「里緒殿、頼みまする! そろそろ麻呂の結界も限界におじゃりまするぅ!」


「小娘よ、くれぐれも力の加減を間違うでないぞ? もはや典雅の結界は……」


「うん、わかってる」


 異形を睨んだまま、あたしは静かにうなづいた。


 マロさんの結界はもう、風前の灯だ。あたしが術の発動をミスってもカバーできない。


 術が成功しても勢いが強すぎれば、ヘタすりゃ結界ごと滅してしまうかもしれない。


 もう時間がないから、次の一発が勝負。みんなの命が助かるかどうかは、あたしの術のコントロールにかかってる。


 さあ……スプーン一杯分の匙加減を可能にするために、いますぐ精神を極限まで集中するんだ!


「できる……きっとできる……あたしならできる……」


 自分に言い聞かせながら、息を整え、気を集め、体中に流れる血潮を湧き立たせる。


 でも精神集中してる分、結界を食い破ろうとする音がますます大きく鮮明に聞こえるようになってしまった。


 その大きな恐怖心のせいで、心臓がドキドキしてどうしても集中が乱れてしまう。


 こんなんじゃダメだ! 早く、早く、早く術を発動しなきゃ!


 早く早く早く早く……!


「小娘、落ち着けぃ! 焦るでない!」


 逸る呼吸から、あたしの強烈な緊張を感じ取ったのか、絹糸が鋭く叱責した。


 あたしはビクッと体を震わせて、ゴクリと唾を飲み込む。


 そ、そうだ。焦っちゃダメなんだ。焦っちゃいけない。でも迅速にやらなきゃならない。


 迅速に、でも丁寧に、でも早急に、でも間違いなく、最適の一発で術を成功させなきゃ……。


 …………。


 ムリな気がする――――!