神様修行はじめます! 其の五

 分かれた一方が、水晶の群れの方へと向かっていく。


 そして、その上を落ち着きなくクルクルと旋回し始めた。


 ……なんか……

 こっちを気にしながらソワソワしている、あの様子って……


「宝物でも見張ってるように見えない?」


「さようでございますね。ひどく警戒しているように見えます」


 うん。なんていうかさ、大事なものを一生懸命守ってるみたいに見えるんだよ。


「昔話に出てくる強欲ババが、お金のたんまり入った瓶の上に覆い被さって、『ここにはなにもない!』って叫んでいるように見えますわねぇ」


「あの異形にとって、ここの水晶は貴重品ということなのでおじゃろうか?」


 あー、そっか。この水晶は特殊なエネルギーの集合体だから。


 異形にとっては、世界三大珍味レベルの高級品。


 つまり、アムール川のチョウザメの卵みたいなもんなんだ。


「ここにいるだけで、あの異形は恩恵を受けているのじゃろうて」


「それをあたしたちに、取られると思ってるんだね。だからこんなにしつこく追い払いたがってるんだ」


 そう思って眺めれば、異形の様子は、シッポをピンと伸ばして警戒してる犬みたいに見える。


 うん、似てる似てる。坂本さんちで飼ってるビーグル犬にそっくり。


 犬みたいに追っかけてくるヤツだと思ったら、ほんとに番犬だったのか。


 じゃあヘタに水晶にちょっかいさえ出さなきゃ、ひとまず戦闘に発展する危険性はないってこと?


「水晶には近づかぬのが得策じゃな。となればここで……」


「水園!?」


「……え? なに?」


「水園! 水園! 水園!」


 いきなりクレーターさんが、結界の壁に激突するほどの勢いでベタッとへばり付いた。


 その視線の先の、水晶の群れの端の辺りで、ひとつの影がユラリと動く。