慌てた凍雨くんが、退こうとしてジタバタもがいている。
たいして広くもない結界の中は、引っくり返った全員が入り乱れて、うめき声をあげながらゴッタ返していた。
これじゃまるで、あたしの机の引き出しの中だよ!
落ちてきたのがしま子じゃなくてよかった! 絹糸だったら、マジ死んでるし!
「いますぐ退きま……うわぁ!?」
―― ド―――――ンッ!
結界全体が大きく傾いで、身を起こした凍雨くんが悲鳴をあげながらまた倒れてくる。
「ぐふっ! お、重……!」
「すみませんー!」
凍雨くんの体重を必死に受け止めながら、あたしの目は、視界の端に蠢く黒い影を追っていた。
絹糸の体をすっぽり覆ってしまいそうな、巨大な影。
どんくさい魚が、でかい図体を持て余して突っ込んできたのかと思ったけど、違う。
これ、明確にこっちを狙ってきてる! しかも生き物じゃない!
黒い色をした、ボヤッとした霧の集合体みたいな物質を指さして、あたしは叫んだ。
「クレーターさん! あの流線型の、ひしゃげたデカいラグビーボールみたいな黒い影ってなに!」
「わからん! あんなもの、見たこともない!」
「見たことないって、ずっとここで暮らしてたんでしょ!?」
あんな目立つ、しかもわざと他人様に体当たり食らわしてくるような危険物質、知らないの!?
「ここでは暮らしておらん! 我らが住んでいたのは、このずっと上だ!」
あ、そう言えばそうでした。
この深さは、小浮気一族ですら踏み込んだことのない領域だったっけ。
じゃあ、あの黒い物質はこの辺を根城にしている未知の異形とか!? うわ、それやばい!
追い払うにしても倒すにしても、知らない相手じゃ弱点もわかんないじゃん!
―― ウオォォォ……ン……
鼓膜と頭の芯にビリリと響くような、野太い音が周囲の水を震わせている。
これ、いつも太鼓橋の下から聞こえてくる不気味な音だ。
正体不明なあの音、コイツが出してた音だったのか!
たいして広くもない結界の中は、引っくり返った全員が入り乱れて、うめき声をあげながらゴッタ返していた。
これじゃまるで、あたしの机の引き出しの中だよ!
落ちてきたのがしま子じゃなくてよかった! 絹糸だったら、マジ死んでるし!
「いますぐ退きま……うわぁ!?」
―― ド―――――ンッ!
結界全体が大きく傾いで、身を起こした凍雨くんが悲鳴をあげながらまた倒れてくる。
「ぐふっ! お、重……!」
「すみませんー!」
凍雨くんの体重を必死に受け止めながら、あたしの目は、視界の端に蠢く黒い影を追っていた。
絹糸の体をすっぽり覆ってしまいそうな、巨大な影。
どんくさい魚が、でかい図体を持て余して突っ込んできたのかと思ったけど、違う。
これ、明確にこっちを狙ってきてる! しかも生き物じゃない!
黒い色をした、ボヤッとした霧の集合体みたいな物質を指さして、あたしは叫んだ。
「クレーターさん! あの流線型の、ひしゃげたデカいラグビーボールみたいな黒い影ってなに!」
「わからん! あんなもの、見たこともない!」
「見たことないって、ずっとここで暮らしてたんでしょ!?」
あんな目立つ、しかもわざと他人様に体当たり食らわしてくるような危険物質、知らないの!?
「ここでは暮らしておらん! 我らが住んでいたのは、このずっと上だ!」
あ、そう言えばそうでした。
この深さは、小浮気一族ですら踏み込んだことのない領域だったっけ。
じゃあ、あの黒い物質はこの辺を根城にしている未知の異形とか!? うわ、それやばい!
追い払うにしても倒すにしても、知らない相手じゃ弱点もわかんないじゃん!
―― ウオォォォ……ン……
鼓膜と頭の芯にビリリと響くような、野太い音が周囲の水を震わせている。
これ、いつも太鼓橋の下から聞こえてくる不気味な音だ。
正体不明なあの音、コイツが出してた音だったのか!


