逸らしたノドから漏れた水晶の弱々しい掠れ声に、成重は我を取り戻した。
『水晶殿! いま助けます!』
そう叫んで術式の紋様の中に飛び込んだ瞬間……
―― バチバチィィーーーッ!
『……!?』
成重の体が術式の外側へと放り出された。
文字通り、大の男の体が放物線を描いて軽々と吹っ飛んでしまう。
そして壁に激突した体が、跳ね返るようにドサリと地に落ちた。
『ぐうぅぅ……!?』
全身を、何十本もの針で刺し貫かれたような痛みが走って、地面に転がりながら成重はもんどり打つ。
『成重殿!?』
悶絶する成重の耳に、聞き覚えのある声がした。
見れば水晶を挟んだ術式の反対側に、小浮気の長と水園が、青ざめた顔をして座り込んでいる。
『成重殿! なぜ、そなたがここにいるのだ!?』
『小浮気様……儀式を……儀式を、おやめください……』
痛みと衝撃で声を詰まらせながら、成重は必死に身を起こして訴えた。
『あなた様ならば、この術式を止められるはず。ど、どうか……』
『…………』
『どうか水晶殿を、あなた様の娘の命を、お守りください!』
『そうじゃ。小浮気殿は娘の命を守るために、この決断をしたのじゃ』
背後に近寄る足音がする。
その足音の主に向き直り、成重はガバリと地面に這いつくばって頭を下げて、必死に叫んだ。
『父上! 兄上! なにとぞこのような仕打ちは、おやめください!』
小柄で小太りの、丸顔に深いシワが何本も刻まれている年老いたこの男が、蛟一族の長である父。
そしてその隣には、父親の顔をそのままそっくり年若くしたような、兄が立っている。
父は息子の声など聞こえていないかのように、細い小さい目元を歪めてつぶやいた。
『まったく、完成形の力場の中に飛び込むなどと……。術式が乱れでもしたらどうするつもりじゃ』
『尊い儀式を邪魔だてするな。我が弟ながら実に情けない。恥を知れ、成重』
『水晶殿! いま助けます!』
そう叫んで術式の紋様の中に飛び込んだ瞬間……
―― バチバチィィーーーッ!
『……!?』
成重の体が術式の外側へと放り出された。
文字通り、大の男の体が放物線を描いて軽々と吹っ飛んでしまう。
そして壁に激突した体が、跳ね返るようにドサリと地に落ちた。
『ぐうぅぅ……!?』
全身を、何十本もの針で刺し貫かれたような痛みが走って、地面に転がりながら成重はもんどり打つ。
『成重殿!?』
悶絶する成重の耳に、聞き覚えのある声がした。
見れば水晶を挟んだ術式の反対側に、小浮気の長と水園が、青ざめた顔をして座り込んでいる。
『成重殿! なぜ、そなたがここにいるのだ!?』
『小浮気様……儀式を……儀式を、おやめください……』
痛みと衝撃で声を詰まらせながら、成重は必死に身を起こして訴えた。
『あなた様ならば、この術式を止められるはず。ど、どうか……』
『…………』
『どうか水晶殿を、あなた様の娘の命を、お守りください!』
『そうじゃ。小浮気殿は娘の命を守るために、この決断をしたのじゃ』
背後に近寄る足音がする。
その足音の主に向き直り、成重はガバリと地面に這いつくばって頭を下げて、必死に叫んだ。
『父上! 兄上! なにとぞこのような仕打ちは、おやめください!』
小柄で小太りの、丸顔に深いシワが何本も刻まれている年老いたこの男が、蛟一族の長である父。
そしてその隣には、父親の顔をそのままそっくり年若くしたような、兄が立っている。
父は息子の声など聞こえていないかのように、細い小さい目元を歪めてつぶやいた。
『まったく、完成形の力場の中に飛び込むなどと……。術式が乱れでもしたらどうするつもりじゃ』
『尊い儀式を邪魔だてするな。我が弟ながら実に情けない。恥を知れ、成重』


