『水晶殿、明日、私にお時間をいただけますか?』
成重は改まった口調で、水晶にそう告げた。
『大切なお話があります。水晶殿の御父上にも、ぜひ同席していただきたいのです』
『え? 父様にも?』
『御父上の承諾が必要な申し込みなのです。どうかお願いします!』
成重は水晶の手を両手で包み込むようにして、強く懇願する。
意味深な言葉と、成重の鬼気迫るほど真剣な表情に、水晶の心臓がバクンと跳ね上がった。
『は、はい。わかりました』
『今日と同じ時刻に参ります。よろしいですね?』
『はい』
『それでは水晶殿、また明日』
しばらくそうして見つめ合い、成重は意を決したように足早に立ち去っていく。
今までになく真剣な横顔と力強い足取りを、完全に視界から見えなくなるまで、水晶はじっと見送っていた。
そして庭には誰もいなくなり、目に見えるのはいつもの見慣れた景色と、耳に聞こえる音は風の囁き。
でも大きく見開かれた水晶の目には、竹もサツキも映らない。
頭の中では、先ほど見た成重の真剣な表情と、彼の言葉が繰り返されている。
そして、そこから予測される答えは……。
『もしかして?』
もしかして。もしかして。もしかして?
叶うのだろうか? 諦めながらも、ずっと消すことのできなかった望みが?
いやまさか。そんなことは有り得ない。でも。そんな。いえ、それでも。
まさか本当に、成重様も私のことを……?
胸が痛いくらいにバクバクと高鳴る。
本当に弾けそうに息苦しくて、水晶は両手で胸を押さえて、ひたすら深呼吸を繰り返した。
落ち着け落ち着け私。こんなときこそ冷静になるんだ。
自分が想う相手に想われる? なにをバカな。そんなのまるで奇跡じゃないか。
そんな奇跡、あるわけがない。そんな奇跡が……。
奇跡が……。
たしかに起こった。あの日、太鼓橋で。
成重は改まった口調で、水晶にそう告げた。
『大切なお話があります。水晶殿の御父上にも、ぜひ同席していただきたいのです』
『え? 父様にも?』
『御父上の承諾が必要な申し込みなのです。どうかお願いします!』
成重は水晶の手を両手で包み込むようにして、強く懇願する。
意味深な言葉と、成重の鬼気迫るほど真剣な表情に、水晶の心臓がバクンと跳ね上がった。
『は、はい。わかりました』
『今日と同じ時刻に参ります。よろしいですね?』
『はい』
『それでは水晶殿、また明日』
しばらくそうして見つめ合い、成重は意を決したように足早に立ち去っていく。
今までになく真剣な横顔と力強い足取りを、完全に視界から見えなくなるまで、水晶はじっと見送っていた。
そして庭には誰もいなくなり、目に見えるのはいつもの見慣れた景色と、耳に聞こえる音は風の囁き。
でも大きく見開かれた水晶の目には、竹もサツキも映らない。
頭の中では、先ほど見た成重の真剣な表情と、彼の言葉が繰り返されている。
そして、そこから予測される答えは……。
『もしかして?』
もしかして。もしかして。もしかして?
叶うのだろうか? 諦めながらも、ずっと消すことのできなかった望みが?
いやまさか。そんなことは有り得ない。でも。そんな。いえ、それでも。
まさか本当に、成重様も私のことを……?
胸が痛いくらいにバクバクと高鳴る。
本当に弾けそうに息苦しくて、水晶は両手で胸を押さえて、ひたすら深呼吸を繰り返した。
落ち着け落ち着け私。こんなときこそ冷静になるんだ。
自分が想う相手に想われる? なにをバカな。そんなのまるで奇跡じゃないか。
そんな奇跡、あるわけがない。そんな奇跡が……。
奇跡が……。
たしかに起こった。あの日、太鼓橋で。


