『でもいま、つくづく思うんです。私は姉様じゃなくて良かったって』
『なぜそう思うのですか?』
『それは……』
軽く首を傾げて、水晶は指先でモジモジと髪をいじっている。
なにやら言いにくそうに唇をモゴモゴさせて、やがて成重からふわりと視線を逸らした。
『だって……成重様の友だちは、姉様じゃなくて私ですから……』
『……!』
小鳥の鳴き声よりも小さな、震え声。
首筋まで赤く染まった水晶は、照れ隠しなのか、やたら瞬きを繰り返している。
『だから私は、私がいいです。姉様よりも、だんぜん私がいいです』
それだけ言って水晶は、息が詰まったように真っ赤になって、カチコチに固まっている。
成重は、水晶の小柄な体を抱き寄せたい衝動を押さえるので、精いっぱいだった。
あぁ……この人は、いつもいつも……。
『水晶殿、あなたは、いつも……』
出会ったときから、いつも私に与えてくれる。
気づかせてくれる。救ってくれる。
水底にずっと息を潜めて沈んでいた、無垢で透明な水晶。
そのあなたが、世界の姿を気づかせてくれた。
あの太鼓橋で、この水晶と出会ったのは私。
一族の長である父上でもなく、跡取りの兄上でもなく、天与の才を持つ遥峰でもない、この私。
あの奇跡のような出会いに、私が誰でもない私であるという幸運に、いま心から感謝する。
水晶、あなたは、私の僥倖。
私はあなたを、心から愛している……。
『なぜそう思うのですか?』
『それは……』
軽く首を傾げて、水晶は指先でモジモジと髪をいじっている。
なにやら言いにくそうに唇をモゴモゴさせて、やがて成重からふわりと視線を逸らした。
『だって……成重様の友だちは、姉様じゃなくて私ですから……』
『……!』
小鳥の鳴き声よりも小さな、震え声。
首筋まで赤く染まった水晶は、照れ隠しなのか、やたら瞬きを繰り返している。
『だから私は、私がいいです。姉様よりも、だんぜん私がいいです』
それだけ言って水晶は、息が詰まったように真っ赤になって、カチコチに固まっている。
成重は、水晶の小柄な体を抱き寄せたい衝動を押さえるので、精いっぱいだった。
あぁ……この人は、いつもいつも……。
『水晶殿、あなたは、いつも……』
出会ったときから、いつも私に与えてくれる。
気づかせてくれる。救ってくれる。
水底にずっと息を潜めて沈んでいた、無垢で透明な水晶。
そのあなたが、世界の姿を気づかせてくれた。
あの太鼓橋で、この水晶と出会ったのは私。
一族の長である父上でもなく、跡取りの兄上でもなく、天与の才を持つ遥峰でもない、この私。
あの奇跡のような出会いに、私が誰でもない私であるという幸運に、いま心から感謝する。
水晶、あなたは、私の僥倖。
私はあなたを、心から愛している……。


