それから毎日、成重は水晶に会いに行った。
これまでは用事にかこつけて小浮気邸に顔を出していたのだが、もうそんな体裁は、成重にとって必要なかった。
誰にはばかることなく堂々と、水晶に会いたい。
もう成重にとって水晶への想いは、臆するものではなかったから。
だがそうなれば当然、周囲の知るところとなって、噂にもなり始める。
口の悪い者たちは、こぞってふたりのことを陰でヒソヒソと物笑いのタネにした。
『上位一族の、味噌っかす同士』
『目立たない日陰者同士、お似合いの組み合わせ』
自分たちを卑下するそんな噂話は、水晶の耳にも入っていた。
そのたびに、皆は思い違いをしていると思う。
成重は別に、そういった種類の好意を、自分に対して持っているわけではないのだ。
だって、こんなに頻繁に通ってきながら、一度もそんなことを口にしたことはないのだもの。
だからふたりの間にあるものは、周囲の思惑とは違って、純粋な友情なのだ。
そうなのだ。そうに決まっている。だから……。
期待しては、いけない。
そう自分に言い聞かせながら、本当はまったく逆なことを望んでいる自分の本音に、水晶は気づいていた。
毎日、成重に会えるのが楽しみでしかたがない。
成重の顔から目が離せない。声が耳から離れない。
そばにいる間中、心は手毬のようにポンポンと跳ねあがり、そのまま羽が生えて飛んで行ってしまうかと思うほど。
別れの挨拶をして見送った瞬間から、もう会いたくて会いたくて、たまらない。
会いたい。切ない。苦しい。……もどかしい。
胸に溜まった想いを吐息に変えて、吐いても吐いても、切なさも熱さも募るばかり。
やるせない思いに焦がれ、人知れず水晶は涙を零した。
これは……恋情。
自分は、成重に恋をしている。
誰も見つけてくれなかった自分という存在を、やっと見つけてくれた人。
そしてまた今日も、あの人が会いに来てくれる……。
これまでは用事にかこつけて小浮気邸に顔を出していたのだが、もうそんな体裁は、成重にとって必要なかった。
誰にはばかることなく堂々と、水晶に会いたい。
もう成重にとって水晶への想いは、臆するものではなかったから。
だがそうなれば当然、周囲の知るところとなって、噂にもなり始める。
口の悪い者たちは、こぞってふたりのことを陰でヒソヒソと物笑いのタネにした。
『上位一族の、味噌っかす同士』
『目立たない日陰者同士、お似合いの組み合わせ』
自分たちを卑下するそんな噂話は、水晶の耳にも入っていた。
そのたびに、皆は思い違いをしていると思う。
成重は別に、そういった種類の好意を、自分に対して持っているわけではないのだ。
だって、こんなに頻繁に通ってきながら、一度もそんなことを口にしたことはないのだもの。
だからふたりの間にあるものは、周囲の思惑とは違って、純粋な友情なのだ。
そうなのだ。そうに決まっている。だから……。
期待しては、いけない。
そう自分に言い聞かせながら、本当はまったく逆なことを望んでいる自分の本音に、水晶は気づいていた。
毎日、成重に会えるのが楽しみでしかたがない。
成重の顔から目が離せない。声が耳から離れない。
そばにいる間中、心は手毬のようにポンポンと跳ねあがり、そのまま羽が生えて飛んで行ってしまうかと思うほど。
別れの挨拶をして見送った瞬間から、もう会いたくて会いたくて、たまらない。
会いたい。切ない。苦しい。……もどかしい。
胸に溜まった想いを吐息に変えて、吐いても吐いても、切なさも熱さも募るばかり。
やるせない思いに焦がれ、人知れず水晶は涙を零した。
これは……恋情。
自分は、成重に恋をしている。
誰も見つけてくれなかった自分という存在を、やっと見つけてくれた人。
そしてまた今日も、あの人が会いに来てくれる……。


