神様修行はじめます! 其の五

 毎日毎日、拷問に等しい過酷な宝物創りを強いられ、死者も多数にのぼるという。


 さぞや皆、涙にくれて疲労困憊、打ちひしがれているだろうと確信していた。


 だから本当は、こんな悪代官の年貢の取り立てのような役目は、断りたかったのだ。


 でも十四番目の部屋住み息子に、拒否権などは一切与えられていないから、命令に従うより他になかったけれど。


『私は蛟一族の、成重と申します』


『小浮気一族の水晶でございます。こちらがお約束の宝物です。どうぞお納めください』


『確かに受け取りました。それでは次回も、期日までに間違いなく……』


『承知しております。ではこれで失礼いたします』


『あの!』


 宝物を手渡し、欄干から水面へ飛び込む気配を見せた水晶に、成重は思わず声をかけていた。


『はい? なにか他にご用でしょうか?』

『あの……』


 声をかけておきながら、成重は困惑していた。


 呼び止めて、自分はなにを言うつもりなのか。


 ただ、辛酸を舐めている小浮気一族が、気の毒に思えてならない。


 かと言って自分がいまここでなにを言ったとしても、彼らにとってはなんの気休めにもならないことも、よく分かっていた。


『……あの、本当に、良いお日和ですね』


 気がつけば、そんな気の利かない言葉が口を突いていた。


 あまりにも陳腐な言葉に、我ながら情けなくて頭を抱えてしまいそうになる。


 でも水晶の、さきほど見せたあの幸せそうな表情が、成重の心に強烈な印象となって残っていた。


 こう言えば、ほんのわずかでもこの少女は、喜んでくれるのではないか?


 なんとか喜ばせたい。この人を。


 成重は無意識のうちに、そう考えていたのだ。