神様修行はじめます! 其の五

 一瞬、自分の周りの空間の温度が、スッと低くなった気がした。


 指先がひんやりと冷たくなって、心臓のあたりが押しつけられたようにジィンと痛む。


 人間の体内の水分を使って、宝物を創れ?


 ……なにそれ。宝物と、人の血液や体液を交換するってことなの?


 いや、だって。だって、そんなことして……。


「そんなことして、無事ですむの?」


「すむわけがないだろう。死ぬさ。当然な」


「…………」


「我ら一族は長く水底で暮らしているうち、体内の水分がここの水と同調したらしい。宝物創りには、もってこいの材料というわけだ」


「なにそれ……」


「いつも上層部が直々に、我ら一族の中で最も適した者を選んで犠牲にした。この方法は通常の術よりも効率が良いのだそうだ」


 最も適した材料? 効率がいい?


 なにそれ? なにそれ?


 絹糸の金色の目の奥にも、あたし同様に大きな困惑が見える。


 絹糸も、この事実を知らなかったんだ。


 前に絹糸は、宝物庫の警備は恐ろしいほど厳重で、自分ですら忍び込むことは不可能だと言っていた。


 そりゃあ宝物を置いてある場所なら、さぞかし警備も厳重だろうと単純に思っていたけど。


 違う。警備が厳重な意味は、それだけじゃなかったんだ。


 上層部は事実を隠したかった。


 それは、さぞ厳重に隠蔽したくもなるだろう。


 自分たちが神の一族である仲間を生け贄にして、欲しい物を手に入れているのだとしたら。