神様修行はじめます! 其の五

「……それは、どういうことじゃ?」


 絹糸が、訝しげな声でクレーターさんに問いかける。


「この澱んだ水では、いくら小浮気一族といえど、もはや宝物など創れぬであろうに」


「創れるのだ」


「なに?」


「創れるのだよ。我らならば」


「……? それは、長い時間と手間をかけて、別の水から宝物を創り出すということかのぅ?」


 クレーターさんが、フッと鼻から抜けるような乾いた笑い声を絹糸へ返した。


「上層部にそんな正論が通じるものか。もっと手っ取り早い成果を、あの連中は要求してきたのだ」


「意味が、分からぬが?」


「絹糸よ、人間の体は、なんで出来ていると思う?」


 そう言われた絹糸の金色の目が、一瞬の間をおいてハッと見開かれた。


 絹糸は無言でクレーターさんの顔を凝視して、クレーターさんは真っ直ぐ前を向いたまま、虚ろな目をして水を眺め続けている。


 そのふたりの顔を交互に眺めながら、あたしは考え込んでいた。


 人間の体が、なんで出来ているかって?


 それは、皮膚とか、筋肉とか、脂肪とか、骨とか、いろんな物で出来ているけど?


 あとは血液とか、体液とか……。


 …………。


 体、液?


 そこまで考えて、あたしは意識的に自分の思考をストップさせた。


 すごく……ものすごく嫌な予感がして、その先を考えたくなかったから。


 否定と予測が葛藤するあたしの気持ちを見越したように、クレーターさんが非情な答えを告げる。


「人間の体は、そのほとんどが水だ。つまり上層部は我らの体の水分を使って、宝物を創り続けろと命令してきたのだ」