「ほら、頑張って勇気だして行こうよ。水園さんを助けに行くんでしょ?」


「そ、そうだ! この私が可愛い水園をきっと守ってみせるとも!」


「じゃあ早く行こうよ」


「し、しかし、あんな異界の入り口に飛び込むなど、初めてのことで……ああぁぁ……」


「だから、誰もアンタひとりに飛び込めって言ってるわけじゃないんだから。みんな一緒だから怖くないよ」


「勘違いするな! 私は恐れているわけではない! 父親の愛の前に、立ちはだかるものなどありはしないのだ!」


「ならさっさと立って、さっさと行こうよ」


「分かっている! ……だが……ああぁぁぁ……」


 ……ダメだこりゃ。


 あたしは溜め息をついて、クレーターさんを置いてみんなの元へ戻った。


「なんじゃ? 小浮気はどうしたんじゃ?」


「あっちで、こじらせたメンドくさい彼女みたいな状態になってる」


「なんじゃそれは。しかたないのぅ。誰かあの面倒くさいハゲをこっちに連れて来い。すぐに出発……」


―― ゴゴゴゴ……


 不意に、太鼓橋の下から不可解な振動が伝わってきた。