「ベルベットちゃん、わたくしたちは行くべきですわ」


 お岩さんが背筋をピンと伸ばし、力強い声で援護射撃してくれる。


「永久様の身の安全が、この世の安泰なのでしょう? なら、わたくしたちは行くべきです」


「この単細胞コンビは、頼むからもう少し頭を働かせんか。行ってみて永久がいなかったらどうする? 無駄に時間をくうことになる」


「それでも、行かなくてはならないのですわ!」


「にー! にー!」


 お岩さんのドレスの、象さんワッペンの胸元からチョコンと顔を出している子猫ちゃんも、可愛らしい鳴き声で同意してくれた。


「絹糸様がご決断に躊躇していらっしゃるお気持ちは、ご理解申し上げます。ですが我らに、そのようなお気遣いはご無用でございます」


 そう言って決断を促すセバスチャンさんを、絹糸はチラリと眺めた。


 透けるように美しい黄金色の目に、わずかな迷いがみえる。


 門川君がいない現状、絹糸がこのチームのリーダーだ。


 身の安全をまったく保障できない未知の世界に、門川君の無事を賭けて、この全員を引き連れていく判断の是非をしかねているんだろう。


 それは分かるけど、行くしかないよ。


 なにもしないでいるわけにはいかないんだから、あたしたちは行動するしかないんだよ。


「そうですよ! ボクだって永久様のためなら、どんな危険な場所だってへっちゃらです!」


「僭越ながら、麻呂の結界術がお役に立ちましょう。案じることはおじゃりませぬ」


「うああ! うああう!」


 全員に揃って催促されて、ついに絹糸は大きな溜め息をつきながらうなづいた。


「そうじゃな。年を取ると弱腰になってイカンわい。我らは行くべきであろうな」


「よっしゃあ! 決定だ! じゃあさっそく太鼓橋へ出発進行!」


 あたしは握り拳をグッと突き上げて、威勢よく叫んだ。


 すぐに行くからね! 待ってて門川君!