神様修行はじめます! 其の五

 ちょっと待て! 破壊ってなんだ破壊って! 


「たかが水が一滴分零れたくらいで、破壊なんて大げさでしょ!?」


「水絵巻は、あの状態で完全無欠なのだ。水一滴分を失っただけでも欠陥となる。もはや使い物にならん」


「な、ならんって……」


「おしまいだ」


 小さな声でつぶやくクレーターさん、なんだか悪い夢でも見ているような表情だ。


 自分で言いながら、自分が言っていることが信じられない。……そんな顔してる。


 え? え? マジメに真面目な話なの? 本当の本当に、水絵巻は……?


「こやつが言うならば、水絵巻はもう本当に破壊されておろうな」


 断言する絹糸の冷静な声が、余計にこの場の緊迫感を盛り上げる。


 おいおいおい! そんな、淡々と断言しないでください!


 だって水絵巻がなかったら、お岩さんとセバスチャンさんが……!


「小浮気は、今でこそ宝物庫の管理の役目を担っておるが、元々は神通の宝物を作り上げる技能士の一族じゃった」


「そうだ。その縁で我らは、宝物庫の管理を一手に任されているのだ」


「水絵巻は、かつての小浮気一族が作り上げた渾身の逸品。こやつが一番、あれについては詳しい」


 じゃあ、やっぱり水絵巻は、壊されちゃったってことで間違いないの?


 そんな、どうしよう。お岩さんたちの過去の真実を知る、唯一の手段なのに。


「そもそも、宝物庫の奥で厳重に管理されてるはずの水絵巻が、なぜここにあったんですの?」


「そもそも、水絵巻が宝物庫から持ち出されていたことを、小浮気様もご承知だったのでおじゃりますか?」


「そもそも、私がそんなことを絶対に許すわけがないだろう」


 いや、だから、そもそも!


「水絵巻って、いまドコ!?」