神様修行はじめます! 其の五

 床板の上に、小さな小さな水滴が、ポツンと落ちていた。


 すごく門川君らしい几帳面さが満ちているこの室内の中で、その水滴は、妙に場違いで違和感がある。


 なんだろ? 雨漏りかな? でもこの庵って新築だよね? 手抜き工事か?


「この水は……!」


 クレーターさんが、自分の鼻をぶつけんばかりに、水滴に顔をガバッと近づけて凝視する。


「クレーターさん? どうしたの?」


「水絵巻……!」


「え?」


「この水は、門川の家宝『水絵巻』の水だ!」


 水絵巻の水? ……ああ、たしかに水絵巻は、そのほとんどが水でできているけど。


 じゃあ、この水って水絵巻から零しちゃった水なの? 


 なあんだ。だったらちゃんと拭いときゃいいのに。


「でもなんで、こんなとこに水絵巻があるのかな? 家宝って、宝物庫から絶対に出しちゃダメなんでしょ?」


「…………」


「もしもーし? おーい?」


「たしかに、勝手な持ち出しは厳罰なのだ。だがそれ以上に、いやまさか、いやしかし……」


「もしもーし? クレーターさん聞こえてますかー?」


「まさか、水絵巻が…………破壊、されてしまった……?」


「はああぁぁ!? 破壊ぃ!?」