「手がかりどころか、味も素っ気もないのぅ。実に永久らしい部屋じゃな」
周りを見回しながら、妙に感心した声で絹糸が言う。
「あちら側の部屋は、水園さんが使っていた私室のようですわ。女性用の衣装が置かれていましたから」
「ここは永久様の私室のようですね。とりたてて異常も、目ぼしい物もないようです」
たいして大きくもない庵の探索は、あっという間に終了。
つまり、いきなり手詰まりになってしまったわけだ。
「どうしよう。門川君、道すがらにパンくずでも置いてってくれてれば、追跡が楽なのに」
「アマンダったら、メーテルリンクじゃあるまいし」
「グリム兄弟でございます。ジュエル様」
「あら? ヘンゼルとグレーテルって、パンくずを利用した罠を青い鳥に仕掛けて、まんまと捕獲する物語じゃありませんこと?」
「違います」
「違いませんわよ。たしか、悪者を釜茹での刑に処して、青い鳥も、金銀財宝も手に入れて、濡れ手に粟の大もうけをするという……」
「という話ではございません。それは実にジュエル様好みにブレンドされたストーリー展開でございますが、まったく違います」
「それはともかく、これからどうしよっか? 宝物庫の方に行ってみる?」
「そうじゃのぅ。じゃが宝物庫はこことは違って警備が……うむ?」
「絹糸? どうかしたの?」
なにかを見つけたらしい絹糸が、床の間に近づいて、床板に鼻先をくっつけている。
「絹糸、なにか不審物でも発見した?」
「見よ。これじゃ」
「いや、見ろったって、どれよ? なんも見えないよ」
「ようく見てみぃ。ほれ、これじゃよ」
そう言われて、絹糸の鼻先のあたりを、よーく凝視したら……。
「……これ、水?」
周りを見回しながら、妙に感心した声で絹糸が言う。
「あちら側の部屋は、水園さんが使っていた私室のようですわ。女性用の衣装が置かれていましたから」
「ここは永久様の私室のようですね。とりたてて異常も、目ぼしい物もないようです」
たいして大きくもない庵の探索は、あっという間に終了。
つまり、いきなり手詰まりになってしまったわけだ。
「どうしよう。門川君、道すがらにパンくずでも置いてってくれてれば、追跡が楽なのに」
「アマンダったら、メーテルリンクじゃあるまいし」
「グリム兄弟でございます。ジュエル様」
「あら? ヘンゼルとグレーテルって、パンくずを利用した罠を青い鳥に仕掛けて、まんまと捕獲する物語じゃありませんこと?」
「違います」
「違いませんわよ。たしか、悪者を釜茹での刑に処して、青い鳥も、金銀財宝も手に入れて、濡れ手に粟の大もうけをするという……」
「という話ではございません。それは実にジュエル様好みにブレンドされたストーリー展開でございますが、まったく違います」
「それはともかく、これからどうしよっか? 宝物庫の方に行ってみる?」
「そうじゃのぅ。じゃが宝物庫はこことは違って警備が……うむ?」
「絹糸? どうかしたの?」
なにかを見つけたらしい絹糸が、床の間に近づいて、床板に鼻先をくっつけている。
「絹糸、なにか不審物でも発見した?」
「見よ。これじゃ」
「いや、見ろったって、どれよ? なんも見えないよ」
「ようく見てみぃ。ほれ、これじゃよ」
そう言われて、絹糸の鼻先のあたりを、よーく凝視したら……。
「……これ、水?」


