「遅い」
マトが珍しく、苛立ちを隠そうともせずに呟いた。
「気になるなら行って見ればいいでしょ」
マヤは半ば呆れ気味だった。
「見に行くなんて、そんな無粋なこと出来ないよ」
「でも、ここでイライラしながら待ってるよりはいいでしょ?」
「もし蘭が脅されてて言いなりになってるなら、もちろん助けるさ。でも」
「でも、そうは見えなかったから、戸惑ってるんでしょ。マトは」
いつも頼りになる兄が、こと女子が絡む事柄になると、てんでお話にならなくなる。
そこが嬉しくもあり、もどかしくもあるマヤだった。
「蘭は嫌がってなかった。自分を連れ去った男なのに、ちっとも怯えてなかった。ね、マト」
「……うん」
かつて漆黒の総帥であった男を見た瞬間、怒りと憎しみが噴き出したマトだった。
シャルティがいなければ、どちらかが倒れるまで闘っただろう。
それが、普通だと思う。
なのに何故、蘭はそうではないのか。
異世界から来た人間だから、感覚が違う?
それとも。
ガルーダに滞在中、シド・フォーンと心を通わせるような出来事でもあったのだろうか。
そう考えた途端、マトの胸がチクリと痛んだ。
「蘭は俺が守るって決めたんだ」
「別に決めてしまわなくったっていいでしょ。兄さん」
「ばばさまにも言われてるんだから、俺が守るよ」
マトの視界に、もはやマヤは入っていないようだった。
目の前にいるというのに。
それが面白くないマヤは、少し意地悪な気分になって来た。
(一番身近な筈の妹をないがしろにするなんて許せない)
そんな思いがふつふつと込み上げて来る。
「シドが手を握った時、ラン、凄く嬉しそうな顔して笑ったよ」
実際にはそんなことはなかったが、マトは蘭の顔を見られない恰好だったために、すぐに妹の嘘を信じてしまった。
マトが珍しく、苛立ちを隠そうともせずに呟いた。
「気になるなら行って見ればいいでしょ」
マヤは半ば呆れ気味だった。
「見に行くなんて、そんな無粋なこと出来ないよ」
「でも、ここでイライラしながら待ってるよりはいいでしょ?」
「もし蘭が脅されてて言いなりになってるなら、もちろん助けるさ。でも」
「でも、そうは見えなかったから、戸惑ってるんでしょ。マトは」
いつも頼りになる兄が、こと女子が絡む事柄になると、てんでお話にならなくなる。
そこが嬉しくもあり、もどかしくもあるマヤだった。
「蘭は嫌がってなかった。自分を連れ去った男なのに、ちっとも怯えてなかった。ね、マト」
「……うん」
かつて漆黒の総帥であった男を見た瞬間、怒りと憎しみが噴き出したマトだった。
シャルティがいなければ、どちらかが倒れるまで闘っただろう。
それが、普通だと思う。
なのに何故、蘭はそうではないのか。
異世界から来た人間だから、感覚が違う?
それとも。
ガルーダに滞在中、シド・フォーンと心を通わせるような出来事でもあったのだろうか。
そう考えた途端、マトの胸がチクリと痛んだ。
「蘭は俺が守るって決めたんだ」
「別に決めてしまわなくったっていいでしょ。兄さん」
「ばばさまにも言われてるんだから、俺が守るよ」
マトの視界に、もはやマヤは入っていないようだった。
目の前にいるというのに。
それが面白くないマヤは、少し意地悪な気分になって来た。
(一番身近な筈の妹をないがしろにするなんて許せない)
そんな思いがふつふつと込み上げて来る。
「シドが手を握った時、ラン、凄く嬉しそうな顔して笑ったよ」
実際にはそんなことはなかったが、マトは蘭の顔を見られない恰好だったために、すぐに妹の嘘を信じてしまった。


