不毛な恋をするほどツラく苦しいことはないだろう。
その想いが叶う保証も客観的な幸せもそこには存在していないのだから。
それでも想いを持ち続ける非科学的な思考は、本人にしか理解できない境地のもので、他者が口を出したところで簡単に曲がるものではない場合がほとんどである。
だからきっと、例に漏れず「久藤廈織」もその一人。
私と同じように形は違えど不毛な想いを胸に秘めている。
「君だって、十分に一途じゃないか。別れたとは言え、中学の頃から悠希と付き合ってたんだろ?」
私は使った割り箸や紙皿をまとめていた手を止めて彼を見る。
そして言った。
「私と廈織くんの一途は、一緒じゃないよ」