もうすぐ真昼が近付いていた。
時計を見たわけではないが、太陽がほぼあたしの頭の真上に来ていたから。
上靴を叩きつけるように投げつけ、ローファーに履き替える。ロッカーの扉を殴ってやりたいほどやりきれない気持ちだった。そんなことをしても、どうにもならないのに。
泣きそうなわけじゃなかったけれど、顔が歪んだ。カバンをひっつかんで校舎を後にする。
その時、何重にも重なってあたしの名が叫ばれるのが聞こえた。
「桃っ!!」
振り返ると、必死にこちらへと走ってくる四人の女生徒が見えた。美登里に葵に奈々美…それに、赤星さんだ。
泣きそうなほどにくしゃくしゃな顔で、あたしの手を握る美登里。
あたしはただ感情の無くなったような冷めた目で、彼女たちを見つめ返した。もう希望なんて、どこにも残っていないんだ。
「ごめんなさい…っ!!あ…あたし…最低なことしちゃった…っ、」
大粒のしずくが、美登里の頬を伝う。
「"桜の園"のこと…バレたのあたしのせいなのっ!!…昨日あれから、みんなと話して、ちゃんと検査して…妊娠、してないってわかって…。あたしホッとしちゃって…彼氏に会いに行って、二人で話しこんじゃって…」
「……」
「そしたら門限に遅れて、親に問い詰められちゃって…っ、あたし、怖くてついとっさに、劇のこと言っちゃったの。桃とやってる、って…あたし…っ、まさか学校に連絡されるなんて、思わなくて…!!」
あたしの手を握る美登里の手が震える。でももうあたしは、悲しいとか悔しいとか、そんな風に感じることすらできなくなっていた。
頭も心も空洞になったように、何も感じなかった。
『そのせいで…人が亡くなっても?』
「ごめん…桃、本当にごめん!!桃一人だけ悪者にして…あたし、」
「もうやめよう」
思ったより鋭い声が出た。美登里が驚いて、あたしの腕を放す。
「もうやめやめ。続けらんないでしょ、"桜の園"。それに今、あたし執行猶予付き。停学で済んで良かったよ、今度退学んなったらもう行くとこないから」
「桃──っ、」
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