いつの間にか、頭に血が昇っていた。握りしめた拳の中が熱い。
先生の目はうろたえるように教室内を一巡したが、あたしの元へ戻ってきた視線は鋭いものに変っていた。
「…わからないの?あなたがやろうとしていることは、みんなの将来を潰すことなの!」
「あたし、潰す気なんか…っ!!」
「いいえ、まるっきり自分のことしか見えていないわ」
佳代先生が声を張り上げるところなんて、初めて見た。言葉が直接、心につきささるようだ。上昇していたあたしの熱は、持て余されたように体内を巡っていた。
「…ただ、"桜の園"をやりたいだけです」
あたしが静かにそう言ったとき、はじめて佳代先生が泣きそうな顔になっているのに気がついた。大きな瞳から、今にも崩れてしまいそうだった。
息を呑む。先生の唇が、小さく動く。
「…そのせいで、人が亡くなっても?」
「!?……」
空気の振動が止まってしまったかのように、言葉の意味が汲み取れなかった。
「自殺したのよ…妊娠してた彼女。"桜の園"をやれなくしてしまってごめんなさい、ごめんなさいって…そんなことばかり、ノートに書いてね…」
先生の頬を、一筋の光るものが伝う。
あたしはそんな彼女の横顔を、直視することができなかった。
──この時、あたしは一体どんな顔をしていたのだろう。
「これ以上、みんなを巻き込まないで…。"桜の園"のことは、もう忘れなさい…」
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