櫻の園


耳に飛び込んできたのは、あまりにも慌てたお姉ちゃんの声だった。

不思議に思って時計を見る。寄り道をする時はこのくらいの時間になるし、まだそんなに遅くないのに。


「どこって…今帰ってるとこだけど。どうかした?」

「どうかした?じゃないわよ…」


心底落胆しているような、ため息にも似たお姉ちゃんの声。

訳が分からなかったあたしが息を呑んだのは、お姉ちゃんの次の言葉だった。



「…学校から、八時すぎに電話があったの」



強い風が吹いた。

頬を叩きつけるような、強い風だった。


『台風は依然、強い勢力を保ったまま北東へと進んでいます。今週末にもっとも接近する恐れがあるのは──』


昼過ぎに見た天気予報を思い出す。
あたしの頭の中を、ぐちゃぐちゃに吹き荒らす。



「"桜の園"のことで、話があります…って」




…台風が、近付いていた。












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