松明を持った男性が焦ったように彼の肩を掴んだ。

「アンタまで流行り病にやられちまうぞ!」

すると律を抱いた男性がニヤリと笑った。

たちまちその瞳が赤くなり、キラリと光る。

「平気だ。もう死んでる」

「ひ、ひいいっ!」

赤い瞳に驚いた男性がもんどり打って地面に尻餅をついた。

その瞬間にはもう、律を抱いた男性は恐ろしい早さで駆け出し、姿を消した後だった。

ホッとした瞬間、再び場面が変わった。

「助けてくれたの……?」

小綺麗な部屋に寝かされた律が殆んど息だけのような声で言い、僅かに眼を開けて男性を見つめている。

「いや、まだ助けてない。……お前はこのまま死んでいいのか?捨て子の異人だとバカにされ、母に先立たれた不幸な人生を流行り病で手離してもいいのか?」