「泣くな」

「だって……」

そんな私の涙を指で拭った後、彼は諦めたようにマリウスの指輪を私にはめた。

「本当は他の男からの指輪など我慢ならないが」

翠狼は少しムッとしながら先を続けた。

「お前はまだ暫く学生だし、俺といられない時はこの指輪の力を頼るといい。ただし」

……ただし……?

「はめる指には注意しろ。さもないと許さない」

うん、うん。分かってるよ翠狼。

翠狼が頷く私を見下ろして、少し笑った。

「泣き虫なんだな、お前は」

「だって……」

「もう辛い思いはさせない。俺がお前を守ると約束する」 

「うん。私も、翠狼を大切にする」

私は涙を拭きながら頷くと、めいっぱい背伸びをして彼にキスをした。

そう、ありったけの想いを込めて。

なによりも美しい、この翡翠色に誓って。