なにも出来ないクセに言うことを聞かず、面倒ばかりかけた私を翠狼が嫌うのは当然だもの。

視線を落とした私を見て、瀬里が優しい声を出した。

「藍ちゃんは凄いね。人狼とヴァンパイアに新しい風を吹かせたんだから。みんなびっくりしてたよ。特にカグヤさんなんて」

カグヤさん……。

私は弾かれたように顔をあげた。

それから彼女の、黒曜石のような瞳を思い出して胸がズキッと痛んだ。



『翠狼は私のものよ。あなたには渡さないから』


あの時は、カグヤさんのこの言葉に落ち込んだけれど……今はもう落ち込む事すらあり得ないほど翠狼は遠い。

「明日は『さよなら会』だね。……学校行けそう?」

私はコクンと頷いてから、ベッドに腰かけている瀬里を見つめた。

「うん。ゆっくり休めば明日は大丈夫だと思う」

私がそう言うと、瀬里は相変わらず心配そうに眉を寄せながら、複雑な顔で笑った。