『偉大なるヴァンパイア』なんていわれているなら位だって高いだろうし、お付きの人のひとりやふたりは……。

部屋をさりげなく見回してみたけど、私達以外の人の気配は感じられない。

「誰もいないよ。私だけだ」

彼が思考を読んだのか、私の目線から察知したのかはわからなかった。

「そう。思考を読んだんだよ。でも魅惑の血の持ち主は心を読みにくいんだ。強い香りで集中できなくてね。だからこれが限界だ」

物腰が柔らかいせいか、恐怖心はない。

私は隣の椅子のマリウスを見つめて口を開いた。

「私がここに来ると知ってたんですか?」

「知ってた訳ではないよ。物事の流れを見て先を予想したんだよ。清雪から君の事を聞いていたから」

私は清雪の冷やかに整った顔を思い出しながら彼の話に聞き入った。