GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~

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数時間前。

ドアに身体を密着させたと同時に、カグヤさんの声が聞こえた。

「マリウスは……凄く怒ってるかもね。この度の一件でヴァンパイア側が協定を破りはしたものの、清雪一味を根絶やしにした事で、彼のプライドはズタズタよ」

「協定を破った際は、こちらのやり方で対処すると奴には再三通達している。部下を律することの出来なかった己を恥じるべきだろう」

「それは血の通った者の道理。アイツらはカチカチに凍りつてるもの。無理よ」

「白狼は何と言ってるんだ」

海狼の声がして、翠狼が答えた。

「昨日話したが、白狼は俺たちに任せると言っている。アイツは今、仲裁で忙しいんだ。アジア諸国で人狼族の小競り合いが起きてるからな。これからを見据えると、知らぬ顔は出来ない。白狼がアジアの人狼族の舵取りをし、結束を固めなければいずれ相対せねばならないヨーロッパの人狼族に勝てない」