GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~

深夜。

眠れるわけがなかった。

こんな気持ちでスヤスヤと眠れるわけがない。

私は大きく息をつくとゆっくりと上半身を起こした。

それから視線を落とすと、両手の平をじっと見つめた。

考えただけでも汗が滲む。

盗み聞きした翠狼達の密談が頭から離れない。

……マリウス……。

幾度となくその名前を聞いたけれど、図書室での一件を最後にマリウスの存在が頭から消え去っていた。

あの時、律は確かこう言った。

『マリウスに、君を捧げる』