GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~

あんなに荒々しく私を引っ張って歩いた割に、ハンドルに手をかけている翠狼は恐ろしいほど無言だった。

「……」

「……」

重苦しい空気に挫けそうになる。

でも、こんなの嫌。

私は少しだけ運転席に顔を向けて翠狼に話しかけた。

「あの、翠狼……どうして怒ってるの?」

「……」

翠狼は前を向いたままで、私を見ようともしない。

「迎えに来なくてもよかったんだよ……?迷惑かけたくないし……独りで帰れるか」

「関係ない」

撥ね付けられたように思えて、ズキンと胸が痛んだ。

「……ごめん……」

どうすればいいのか分からなくて、謝ることしか出来なくて、本当に情けない。

男らしい横顔は怒りのせいか更にシャープに見える。

「忙しいのに……ごめん、翠狼」

瞬間、チッと翠狼の舌打ちが聞こえた。

「……っ!」

……嘘。

どうして……?

グッと眉を寄せる翠狼の顔は明らかに不愉快そうなのに、彼は左手を私に伸ばした。