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どれくらい時間が経ったのだろう。

瀬里が帰った後、私は動く気になれずベッドの上で膝を抱いていた。

薄いレースのカーテンから射し込んでいた夕日はいつの間にか窓から外れ、部屋には薄い闇が漂い始めていた。

「藍。藍、入るぞ」

コンコンと音が鳴り、顔をあげるとゆっくりとドアが開くのが眼に入った。

「藍」

……翠狼……。

「電気つけるぞ」

「……」

音もなくフワリと部屋が明るくなり、私は俯いた。

「……どうした」

翠狼が歩を進め、ベッドに腰をかけると私を斜めから見つめた。

「……」

精悍な頬を少し傾けて、心配そうにこちらを見つめる綺麗な瞳が、私の心を締め付ける。

そんな心配そうな眼をしないで。

だって、私よりもあなたの方がきっと何倍も辛かったはずでしょう?

なのに、私なんかのためにそんな顔をしないで。

「……藍。何かあったなら言ってみろ」

声が出せなかった。だって、泣いてしまいそうだったから。