「自分でもどうしてか分からないけど、最初に先輩が狼に変身するのを見た時、恐くなかったんだよね。それよりも神秘的で綺麗だなあって」

それを聞いて私は胸が詰まる思いがした。

「私……翠狼に化け物だって言って傷付けちゃった」

瀬里が優しく笑った。

「あの時は藍ちゃん、大変だったでしょう?気持ちが追い付かなかったんだから取り乱しても仕方ないよ。翠狼は分かってる。それに誰にでも失敗はあるし……もう二度と繰り返さなければいいと私は思ってるよ」

翠狼……。

私は翠狼の顔を思い浮かべながら、あることを思い出した。

「そう言えば……二度と人間の女に手をあげないと瀬里に約束していたって、翠狼が……」

私の言葉に瀬里が一瞬ギクリとした。