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「……とまぁ、こういう事情で私も今に至っているんだけど……」

翠狼の家の私の部屋で、瀬里は話し終えると心配そうに私を見た。

瀬里は全てを私に話してくれた。

ある日、雪野翔先輩が狼に変身するのを見てしまった事。

それをきっかけに雪野先輩と徐々に距離が近くなっていった事。

父親の仕事の関係で雪野先輩と同居がはじまり、幼馴染に失恋した瀬里を彼が元気付けてくれた事。

いつのまにか先輩を好きになり、人狼の派閥争いに苦しむ先輩をどうにかして助けたかった事。

「……怖くなかったの?……人狼なんて……あり得ない世界じゃん」

私がそう言うと、瀬里は飲み終えたコーヒーカップをそっとテーブルに戻して首を横に振った。