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「あの、あの藍ちゃん……」

……ん……?瀬里だ。瀬里の声だ。

「……後は任せる。俺は白狼と話があるから一階にいる」

「……分かった」

瀬里の返事の後、私の手を握っていた手がゆっくりと離れようとした。

今まで温かかった手に、少し冷えた新しい空気が触れる。

「嫌、」

それが不安で私は慌てて眼を開けた。

あ……!

最初に眼に飛び込んできたのは、私から手を離そうとしていた雪野一臣だった。

嘘……っ。

素早く考えた結果、どうやらずっと私の手を握っていてくれたのは雪野一臣だったようだ。

視線が絡んで微妙な沈黙が部屋を包む。

……凄く気まずい……。

そんな中、雪野一臣は私から視線をそらすとドアに近づき、振り返らずに再び口を開いた。

「少しの間、ついててやってくれ」

「うん、任せて」

瀬里がそう言って、閉じられたドアを見てから私に視線を移した。