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温かくて気持ちいい。

物凄くフカフカと心地よくて、眼を開けたくない。

多分……ベッドだ。

でも私のベッドじゃないのは分かる。

だってこんなに寝心地良くないし、匂いだって違うもの。

この匂いは……かいだことある。知ってる匂いだ。

爽やかで、だからって柑橘系じゃなくて……嫌いじゃない。

むしろ、好き。

律かな?

いや、律じゃない。律は……匂いがしなかった。

それに、それに律とはもう……ダメになって……ダメになってその上、命を……。

そこまで考えた時、教会で起こったことが断片的に脳裏に蘇った。

銀の燭台、クリスタルのデキャンタ、燃えるような深紅の瞳、唇から突きだした牙……。