信じられなかった。

この、地味で嘘のつけないような瀬里が暗示にかかった演技をしていたなんて。

しかも、かけた当人の律ですら、それを見抜けていなかったのだ。

でも、どうして?!なんで?!

聞きたいことは山のようにある。

「前に、雪野一臣の事を翠狼って呼んだよね?」

私のその言葉に、瀬里の身体がビクンと跳ねた。

「藍ちゃん」

「ちゃんと答えて!一体何を隠しているの?!」

「藍ちゃん、それはね、」

「瀬里、もういい。俺が話す」

「翠狼……」

リビングのドアが開き、雪野一臣が姿を現した。

瀬里が小さく息をついて頷く。

「分かった……翠狼に任せる」