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律に指示された場所は、教会だった。

両開きの扉を少し押して中を見た私は、一斉にこちらを見た人々に息を飲んだ。

何人いるの?随分多いけど……この人達が、全員ヴァンパイア……?

老若男女を問わずに集まった彼らの服装は、スーツだったりコンビニの制服だったりごくごく普通の私服だったりで、不自然な点はどこにもなかった。

無表情な顔で私を見つめる人達は、律同様、到底ヴァンパイアには見えない。

「気にしなくていい。俺の仲間なんだ」

人だかりで姿は見えなかったけど、人々の奥から律の声が響いた。

私は素早く辺りを見回した。

全体的に埃っぽかったから、今は使われていないのかもしれない。

「いらっしゃい。待ってたよ」

仲間のヴァンパイア達の間から姿を現した律は、あの日となにも変わっていなかった。