「……上がって!」

「……」

「早く」

決まり悪そうな雪野一臣を再び引っ張ると、私はリビングのソファを顎で指した。

「座って。コーヒー淹れるから」

「いや俺は」

私は視線を落とし、戸棚からコーヒー豆を取り出し、メーカーにセットした。

……分かってる。雪野一臣は、私を心配して見張ってくれていたのだ。

律と二人きりで家に帰った私を。

「……ありがとう……」

私が少し頭を下げると、雪野一臣は小さく息をついた。

「……それはいいがもっと肌を隠せ。冷えるぞ。……それからコーヒーなら俺が淹れてやる」

空調は家中統一された暖かさを保っているし、全然寒くない温度だ。