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「瀬里は……大丈夫なの?」

震える声を必死で抑え、私は助手席から雪野一臣に声をかけた。

「瀬里は大丈夫だ。仲間に守らせてる」

仲間……?

「アイツに……沢村律に悟られるな。……それが出来るか?」

赤信号で車を停止させた雪野一臣が、私を見て低い声で尋ねた。

律に、今見た事をまるで知らないように、気づかれないように振る舞う……。

「……分からない……」

「アイツは化け物だ」

雪野一臣が斬って捨てるように言った。

「私……殺されるの?」

私の質問に雪野一臣がすぐ返答した。

「そんな事はさせない」

律に殺されるなんて、嘘みたいだ。

けれど膝の上で組んだ両手は小刻みに震えて、自分の手なのに私はそれを止められなかった。

そんな私を見た雪野一臣が、口を開く。

「しっかりしろ」

しっかりしろ……。その言葉が避難めいて聞こえて、私は声を荒げた。

「簡単に言わないでっ!」

「……悪かった」

「……」